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子育ての講演会で、「絵本の読み聞かせって、どんなふうにしたらいいんですか?」という質問をいただくことが多い。
私も子どもが幼いころは、絵本の読み聞かせが思うようにできず、どうしたらいいのか迷っていた。
長女がまだ2歳のころ、膝に乗せて絵本を読もうとすると、決まって小さな手がひょいっと伸びてきて、いたずらにページをめくってしまう。ちゃんと読まなくっちゃという気持ちばかりが先立ち、いちいちページを戻していた。せっかくの親子の時間だというのに、なんだかうまくいかない。
大切にしていた絵本の時間が、いつしかおっくうになってきたあるとき、書店で一冊の絵本が目にとまった。絵本というカテゴリーで合っているのかどうか分からないけれど。
本のタイトルは、『えのほん』。
アーティストの日比野克彦さんが作った本の前書きに、こんな文章が添えられていた。
『えのほんに落書きしようとしても止めないでください。
えのほんを破ろうとしても止めないでください。』
絵本に落書きをしてもいいの?破ってもかまわないの?
驚く私のことなど、ちっとも気にしない娘は、本の角をかじりだした。ああ、買ったばかりの本なのに…。おもわず顔を手で覆ったとき、前書きの続きを思いだした。
『えのほんによだれをこぼしてもおこらないでください』
ふと見ると、うれしそうに重い本をひっくり返して、さかさまのまま眺めている娘の姿。
これでいいのかな?きっと、これでいいんだよ。
それからは、絵本の読み聞かせをするときのルールをなくした。どこで読んでもいい、どんなふうに読んでもいい、絵本とおもいっきり仲良くなれば十分。姿勢を正して読む必要はどこにもない。
絵本は、親子で同じひとときを楽しむ素敵なツール。それを忘れていたことに、少し反省。
講演会で質問をしてくださった若いお母さんに、私から伝えた。
「決まりごとはなにもないから、親子で絵本を好きになって読み聞かせの時間を楽しんでね」
高野優(たかのゆう)育児漫画家
NHK教育テレビにて「土よう親じかん」(2008年4月~2009年3月)、
「となりの子育て」
(2009年4月~)の
司会を務め、子育てパパ・ママからの支持も厚い。
「吾輩ハ母デアル」(学習研究社)「コドモスクランブル」(講談社)
「みつばのクローバー」(主婦の友社)等、著書多数。
講演会では、マンガを描きながら話をするという独特なスタイルで、
育児に関するテーマが人気。
公式ホームページ http://www.k4.dion.ne.jp/~alamode/
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